鞠−マリイロ−色の都

オリジ小説、二次創作(一般向け)、偶にイラスト等を主とする、純ヲタクな学生のブログ。只今更新停止中。オリジナルのジャンルは、学園ギャグ、ファンタジー等。

後日夜 少年の仕返し

闇夜のディテール 本編 【完結】CM(0) TB(0)

※これは本編のラストの直後の話です。ラスト忘れたぜ、という方はご注意下さい。まあ、覚えていなくてもわかるかもしれませんが。


その時、ゴン!!と鈍く大きな音が地面と空気を震わせた。
音がしたのは上のほう。つまり、イリア達のいる辺りだった。
ルフェイルは目を丸くして、半身だけ起き上がり、声のほうに目をやる。
ゴロン、
ゴロンゴロン、
ゴロンゴロンゴロンゴロン……
と何か丸いものが転がってくる音と共に、一つの点が見えた。
それはどんどん大きくなり、こちらに真っ直ぐすごい速さで向かってくる。
ルフェイルがその正体に気付いたのは、それとの距離が5メートルほどになってからだった。

「ぐぉぉぉっ!小僧ぉどいてくれぇっっ!!」

と言われてももう逃げられるはずもなく、顔を真っ青にして見ているルフェイルに、デカボーリング球ガイは激突した。
ルフェイルはボーリングのピンのように、ふわりと宙に舞い上がると地面にたたき落とされ、何度か転がる。
一方ガイはそのまま坂を降り、木をへし折るほどの勢いでぶつかった。

その光景を見ていた3人のうち、イリアは口をぽかんと開けて顔を真っ青にさせ、ナタリアは溜息をつき、モモはわーいなんだかすごぉい!とはしゃぐ。
ちなみに、サラは店番をしており、ここにはいない。

イリアはルフェイルに慌てて駆け寄ると、体を揺すった。だが、反応はない。
そうこうしている内に、ガイが小走りでやってきた。凄まじいぶつかり方だったのに、さほどダメージは受けていないようだ。
イリアはきっとガイを睨み、強い語調で責める。

「っもう!!ガイが石になんかつまずいて転ぶから!!」
「うぅ…だ、だってよぉ…」

半ベソかきながら弁解しようとしたものの、その余地は全くない。

『………っ』

ルフェイルがうめき声を上げながら緩慢な動作で起き上がった。そしてゆらりと立ち上がる。
その姿はまるで幽霊のようだった。
再び閉じかけていた傷口が開いたせいで流れ出して、顔についた血の跡がさらに恐怖感を煽る。
表情は前髪に隠れてわからない。

「…ル、ルフェイル?」

イリアは気遣うような声を上げ、ガイはぐぇと蛙を潰したような声を出した。
ルフェイルの上げた顔は、にっこりと微笑んでいた。目も三日月を孤の部分が上になるよう横に倒したような形で一見笑っているように見えるが、心の底から蔑んだものだった。

『…この僕にこういうことをするなんて、いい度胸じゃないか、ガイ?』
「い、いや、こ、これにはな、いろんなわけがあって…」
『…ふぅん。でも、僕がこのまま許す―――わけないよね?』

ルフェイルは口の端を吊り上げて笑う。
ガイはその笑みに胸騒ぎにも似た悪寒がした。
嫌な、とても嫌なことが起きるような―――。
ルフェイルはくるりと踵を返すと、後方の少し離れたところに立っていたナタリアの前に立ち、微笑んだ。

『唐突ですけれども、ナタリアさんは7年前の旅で、ガイが浮気したということを知っていますか?』
「それは…本当、ですか?」
『えぇ。そうですよ』

ナタリアの顔が一瞬ひくつく。顔には笑顔を浮かべていたものの、彼女のオーラはどんどん険しいものになっていった。

多分、ルフェイルは梅蘭に初めて会った時のことを言っているのだろう、とガイは直感した。
だが、あれのことはこれっぽっちも好きではない。
しかも魔族でオカマ。
とんだ誤解ではないか。
ガイは慌ててナタリアに走り寄って誤解を解こうとしたが、鼻っ面にルフェイルの肘打ちをまともに喰らった。
ナタリアは笑って言う。

「その女性に手は―――」
『出していませんよ。皆がずっと一緒にいたというのもありますが』
「…そうですか。でも、一瞬でも惚れたことには変わりないんですね…」

ナタリアは真っ黒なオーラを全身から放ちながら、指を鳴らし、ゆっくりとガイに近付いた。

「覚悟はいいわね…?ガイ」

ガイは片手を前に突き出して左右に勢いよく振り、真っ青な顔に冷や汗を流し、震える声で言う。

「い、いや、ちょっと待て…!実はその惚れた女性ってのはオカマでよ、だから女性に惚れたわけじゃ―――」

その言葉に、ナタリアの哀愁を帯びた顔に影が射した。

「あら、それじゃ私はそのオカマさんに負けたことになるんですか?あなたの趣味もついにそこまでいったのね…」

―――もう、何の手のつけようもなかった。
ルフェイルはにっこりと笑って、

『それじゃ、僕も参加させてもらいます』

と言い、モモははしゃいで、

「わーい!モモもやるー!」

と跳び上がった。
頼みの綱のイリアは、もう止められないと判断したのか、少し離れたところにいる。
最凶の魔女は配下二人を連れて、ガイの前に立つ。
目を見開きかちかちと歯を鳴らすガイの顔にかかった3つの影は、みるみるうちにガイに近付き、そして―――

「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

この世の終わりを見て、どんぞこまで叩き落とされた断末魔の響きが、街中どころか隣の街まで上がった。

遠くから見ていたイリアは、やっぱりガイって哀れだな、とぼんやりと思う。
まあ、どれもこれも自業自得なので助けようがないのだが。


その折檻は、約数時間にも及んだという。
ガイは丘に立て膝をつき、心の涙を流しながら、はいつくばって芝生を掴む。
膝に芝生が刺さり、痛かった。でも、こんな痛みになんか負けていられない。先程のがもっと痛かった。

(もうぜってぇ他の女になんか惚れねぇ…!それと、小僧にもう俺の弱点なんか握らせねぇ…!)

そして顔を上げて誓い、夕日に向かいガッツポーズをした。


<了>

***あとがき***

…………なんだか予想の2倍以上に字数取ったんですけどなんですかこれ。
疲れてたいしたことも語れんわー
何だか説明文少ないなーと思われた方、正しいです。テンポ良くするために一部省きました。
ううん、でも最後のほうは踏ん張ったつもりなんですけどねー…。ダメだったかなー。わかりまへん。
あー、あとリク2個ありますが、ゆっくりのったり片付けていきたいと思います。いい加減闇夜休みたいわー。でも休み過ぎると忘れるし受験近付くしで書けなくなりますがね(いやだって今の時点でシャルネットとかアムリースとかの一人称て何だったけー?てレベルですもん)
ではー

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第34夜 終わり、そして始まり 

闇夜のディテール 本編 【完結】CM(0) TB(0)

イリアの後ろ姿が消え去ると、黒猫がルフェイルの頭のほうへと近寄ってきて座った。
もちろん、リーヤである。

『ふん。こうしてみると貴様は阿呆だな』
『うるさいなぁ。好きでこうなってるわけじゃないんだけれども。それに、この傷を作ったのは君だろう?よくそんな大口を叩けるものだね』

ルフェイルはにっこりと笑った。目は明らかに笑っていなかったが。
リーヤは目をあらぬ方向に逸らし、冷や汗を流して呟くように言った。

『そ、それはー…そうする、方法しか…』
『だからって、陶器で頭を殴って失神させることはないんじゃないかい?しかも何度も。あの時はひどい痛みだったよ。いくら僕の体の制御が効かなくて暴れていたからとはいえ、他に方法はあっただろうに』

リーヤは何も喋らず、ただただ冷や汗を流すばかり。
しばらくして、もう反論は出来ないと思ったのか、足音を立てないようにそそくさと立ち上がり、去ろうとした。
何だか腹が立ったので、尻尾を引っ張りこちらに引き寄せると、数本の太めの人参を無理矢理突っ込んだ。
こてんと仰向けにリーヤは倒れ、苦しいようでもがくように手足をばたばたさせる。

これぐらいがちょうどいい。まだ少しやり足りないが。
すっきりしたルフェイルはリーヤから目を離して、空を眺める。
ポケットをあさり、中から取り出したのはネックレス。
手の平の半分くらいの大きさで、凹凸がところどころにあり、いびつな形だが綺麗に磨かれかくばったところのない、水晶のようなもの。それに穴をあけてチェーンを通しただけという質素なつくりだ。
彼にとって重要なのは、ネックレス自体ではなく、この水晶のようなものだ。
これの元の名は、”宝石”。
しかし今は全ての効力をなくし、ただのがらくたと化している。


これは、リーヤがルフェイルを半強制的にでも生きさせようと、ほとんど魔王化していた体を魔物にした際、出て来たものだ。
魔王の体を魔物にすることは、理論的に可能だった。実際、魔王をやめたものは魔物へと還っている。
しかし、それは自然に行われたもので、魔王の力でやることなど前代未聞だ。

一か八かの賭け。でも、それしか方法がないのだから、やるしかなかった。
賭けは成功した。が、それからが問題だったのだ。


無理矢理に体を変えてしまったのでリバウンドがとてもひどく、体が自分の意志とは関係なく動き、ついには暴れるようになってしまった。しかも、いつも暴れているわけではなく、発作のように時間の間隔を空けて起きるから、なおやりにくい。
リーヤいわく、人間であるルフェイルの心が魔物の細胞と上手く同調出来ていないかららしい。
何とか体を思い通りに動かせるよう奮闘したが、やっと同調したのは最近のことで、この前など大暴れをしてしまった。
ちなみに、頭の傷はその時やられたものだ。細かいくだりは先程の会話でだいたいわかるだろう。


”宝石”だったものを空に掲げて、陽光に当てる。
陽光が反射して、きらりと煌めいた。
これが原型を保っていられるのは、何年経っても崩れないよう魔法をかけているからだ。

これを見る度に、自分が人間だった頃、そして人間と魔族の狭間にあった頃を思い出す。
たとえ何百年経ったとしても、今までのことを忘れないようにしなくてはいけない。
シャルネットやウィーゼンのことを覚えているのは、もう自分しかいないのだから。


ネックレスをポケットに仕舞い、瞑目する。
ルフェイルの体が魔物になってしばらくした後、リーヤは梅蘭と共に政務を手伝うように言われた。何でも、信頼出来る人物がほかにいないからだそうだ。
梅蘭はルフェイルより遥かに魔界のことを知っているので、書類処理やリーヤの手伝い、ルフェイルは魔物全員を監視し、何か奇妙な動きがあったらリーヤに知らせる役となった。確かにそれならばそれぞれの個性を活かしているだろう。それらとリハビリを同時に行っていたために、7年もかかってしまったのだが。
ちなみに、梅蘭は今魔界におり、事務に追われているが、終わり次第こちらに来るだろう。

またアムリースは、傷は治ったものの意識は回復していないという。だが、シャウレイズとリアリゼの懸命な看病があるゆえ、いずれは回復するだろう。
リーヤも気になるならそんなに自ら行けばいいのに、魔法で作った使い魔を送って毎日見ている。素直になれないやつだ。


また、ルフェイルは魔法が再び使えるようになった。
魔物としての魔力を手に入れたから、というのもあるが、こんなにもらっても俺様は何も返せない、とリーヤに契約の際渡した魔力の一部を返された。一部とは言ってもかなり多くのものだ。
膨大な魔力に、人間の魔法も使える―――恐らく、魔法に関してルフェイルの右に出るものはいないだろう。

『ねぇ、リヴァイン』

かさりと草の音がする。目を閉じたままだったので実際どうだったかはわからないが、こちらを向いた気がした。

『僕は、やりたかったこと全てが終わったら、死のうと思っていた。生きることにもう飽きていたし、死んだらシャルネットやウィーゼンや他の皆に会えるのかな、とも考えていた』

リーヤは黙ったまま、何も答えない。
目をゆっくりと開けて、手を目の前まで持ってきて、握る。

『でもこうして、生きてしまった。自分の一番嫌いな、シャルネット達を虐殺した魔族の一員となって』

暴れる自分を抑えながら、数え切れない程自分なんか死んでしまえばいいと思った。
下唇を強く噛むと、鈍い音を立てて歯が唇に食い込む。
血の味がした。

『…でも』

力の込めた手をゆっくりと開く。
遠くのほうから、ガイや他の人の騒ぐ声が聞こえてきた。
恐らく、イリアが自分達がいることを話して、ガイ達を連れてきたのだろう。

『あの時君に叱咤されて、ふと思ったんだ。それはただの独りよがりじゃないのか、ってね。自分のしたことに満足感に浸りながら、周りの人の気持ちも考えずに彼等の後を追おうとして。
 それが本当なのか嘘なのか、僕にはわからない。けれども―――』

先程のイリアの顔。
泣いていたけれど、とても嬉しそうだった。
あんな顔をされるとは思わなかった。
こんな自分が生きていることを、こんなにも喜んでくれる人がいるなんて、夢にも思っていなかった。

『初めて、生きてて良かったな、て思えたよ。ありがとう、リヴァイン』

ルフェイルは心底幸せそうな顔で、ほころぶようにはにかんだ。


         <了>

***あとがき***

お、お わ っ た !!
言いたいことは山ほどあるんですか、感無量過ぎて何も語れませぬ!
あとこの後、ギャグを続けようかなーと思ってたんですが……↑、続けていいんですか?!いや、めちゃくちゃダメな気がもりもりと!!
これで全部で61個?かな。あやふやだけど。
61個なんて、気持ち悪過ぎて想像もつかんですねアハハハハハハ!!(壊)
この話をやった企画は、自分の気に入る主人公を、そして作品を書こうといったものでした。
気に入る作品というのは、具体的に言うと私がずっと買い続けたくなるようなモノ。
私はマンガでもアニメでも小説でも、ちょっと飽きるともう買わないので。そんな自分がずっと買いたくなるくらい面白いやつ!と思って書きました。でも、自分が書ける程度なら買いませんよねー。それさっき気付いた(遅ッ)
平たく言えば、自己満足作品だったわけで。面白くもなかったと感じた人もいるはずですが、こんなものにこんなに長々とお付き合い頂き、ありがとうございましたー!(結局語ってるじゃないですか)
ではー!!


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第34夜 終わり、そして始まり 

闇夜のディテール 本編 【完結】CM(0) TB(0)

ガイは、切られ床に落ちたヒゲを見、つるつるになった顎を摩りながら

「うぉぉぉ、俺のヒゲぇぇ…!」

と嘆いており、逆にモモは

「みっしょんこんぷりぃと〜!」

とカミソリを振り回しながらはしゃいでいる。
ナタリアは満足そうに二人から視線を外して、イリアのほうに向き直って微笑んだ。

「あら、そうそう。悪いんだけど、これ外で洗ってきてくれる?皿は私が運んでおくから」

皿と交換で渡されたのは、服やタオルの入った桶。
この町に水は引かれていない。
王都はさすがに引かれているようだが、王都ほどこの町には金もないし、必要もない。近くに流れている川を利用すれば、済むことばかりだからだ。
ちなみに、飲み水は川の近くにある店で、無料で支給されている。
イリアはこくりと頷いて、桶を抱えて家を出た。


川へ行く道程にある丘に登り、イリアは小さく息を吐く。
そよそよと頬を撫でる風が心地よい。昼前の穏やかな陽光を浴びながら、草木の葉は擦れあい、音を立てている。
柔らかな風が髪を優しく靡かせる快感に身を委ね、目を閉じた。
そういえば、彼と初めて会った時もこのようなシチュエーションだったような―――。
とふと思った時、下のほうから小さく声が聞こえた。
イリアはびっくりして目を見開き、声のしたほうを見る。そしてゆっくりと目を見張った。
そこにいたのは、坂を登ってくる一人の少年と一匹の黒猫。
上から、しかもかなり離れたところから見ているので少年の顔は見えないが、何かと喋っているようだ。
黒い髪の少年は旅用のマントを羽織っているが、マントの下から覗く服は黒。
髪も服も黒。
まるで烏のようだ。
そう、昔も思った。
気が付くと、イリアは桶を放り投げ出していた。
走る。
走る。
周りなんか、何も見えない。
彼だけを見て、ただひたすら走る。
見間違えるはずがない。だって、だって―――。
イリアは堪え切れずに叫んだ。

「ルー!」

声に反応してふっと顔を上げた少年は、飛び付いてくるイリアにぎょっと目を剥きながらも、抱き留めようとした。結局、足の踏ん張りが効かなくて支え切れず、坂を転がったが。
少年は頭の痛みに首を降り、苦笑する。

『あぁ、もう痛いなぁ。飛び付いてくるならもっと優しく来てくれないかい?』

起き上がろうとするイリアの耳に、入る声。
やっぱり間違っていなかった。
イリアは嬉しさで涙ぐみながら顔を上げ、一瞬で硬直した。
微笑む顔は、ルフェイルのもの。
でも、目の色が明らかに違った。
金。だった。
碧みがかった、金。
ルフェイルの目を見たままイリアに、彼は再び苦笑する。
今度は、何処か哀しそうだった。

『ごめんね。生きて戻るには、これしか方法がなかったんだ』

目が、金色。
こんな自分でも、この目の色が何を示しているか、わかる。
イリアは俯いて膝の上で拳を握り締める。
搾り出すように呟いた。

「良か、った…」

ぽたり、と涙が拳に当たり、弾ける。

「何年かかっても…
 どんな姿になっても…」

生きて戻って来てくれた。
それだけで、もう充分だ。
ゆっくりと顔を上げて、泣きながら、イリアは微笑んだ。

「お帰り、なさい…」

ルフェイルも微笑み返す。

『ただいま。
 ―――と、言いたいところなんだけれども』

手で制され、何事か、とイリアは目を丸くした。涙がはたりと止まる。

『包、帯を…取ってき…』

とルフェイルは消え入りそうな声を発しながら、仰向けに倒れた。
イリアは真っ青になってルフェイルに駆け寄る。
頭から血が滴り、時折噴水のようにぴゅーと噴き出していた。

「え、あ、あの、その」

ひどく慌てるイリアを安心させるように、ルフェイルは手を振る。

『気に、しなくていいよ…。傷口が、開い、た、だけだから…』

傷口が開いたというのは、先程転がった時か。
なら、明らかに自分のせいではないか。
イリアは青い顔を更に青くさせて、たどたどしい口調で、

「ほ、ほほほ包帯、と、と、取って来ます…」

とだけ言って、全速力でガイ達の家のほうへと向かっていった。


<続>

***あとがき***

終わりませんなぁ!
このまま続けちゃってもよかったんだけど、字数が字数なんでね。それに、この次がどれくらいになるかわかんないし。
もし短くても、それはそれで!みたいな感じです。
あと、これは余談ですが、またテイルズシリーズに闇夜キャラと同じ名前のキャラが出ましたね!
まさかイリアが被るだなんて、夢にも思ってませんでした(笑)しかもヒロイン。性格は全然ちゃいますが。
ガイとナタリアも出てきましたし…次は誰なんでしょうね!
ではー


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第33夜 筋肉男の苦悩

闇夜のディテール 本編 【完結】CM(0) TB(0)

その街のある料亭から、ドタドタと、一人の大の男と女児が走り回る音が騒がしく聞こえる。その後ほど―――

「うぎゃああぁぁぁぁぁっっ!!!」

悲痛な男の叫びが、街中に響き渡った。


「んっふふ〜、もぉにげらんないよ、パパ。いーかげんあきらめなよ」

幼い少女は、剃刀を片手に持って構えたままニヤニヤと笑って、じりじりと歩み寄る。

「いやいや、ちょと待て、な?!」

男―――ガイは、女児―――娘のモモを、半泣きになりながら手で制止しようとした。
もちろん、そんなもので止めることは出来ないのだが。


あの一連の事件から、すでに7年が経った。
あの時幼かったモモは、このように大きくなり、今年で9才になる。
40代になったガイも、さすがに体の衰えを感じてきた。
イリアやサラも大きくなり、大分家の雰囲気が変わってきたが、幸せなことには変わりはない。
だがその幸せにも、何かが足りなかった。そう、あの少年と猫とカマである。
何度か連絡しようとは思ったが、ただの一般市民である自分が、魔界になんぞ連絡出来るはずがない。まあただ単に未だに魔界が恐ろしいというのもあるのだが。
イリアも気にかけているらしく、口には出さないものの、時々考えに耽っては物憂げな表情をしていた。
確かに彼等のことは心配だが、し過ぎてもしょうがないとも思う。
彼等はいつか必ず帰ってくる。そういう確信が何処かにあった。


その問題はさておき、まず目の前にある問題から解決しなければならない。
でないと、7年前から伸ばしている、大切な、大切なヒゲが切られてしまう。

最初は、ルフェイル達がいなくなったことをしっかりと覚えていようと思い、ヒゲを伸ばしていた。しかし、時間が経つにつれ、何だかこのヒゲの触り心地が良くなってきて、趣味にまでなってしまった。
今では胸あたりまで伸びてきて、どこぞの老人のようである。白くはなく、真っ黒であるが。このさらさら感と、ここまで伸ばしたな、という満足感がたまらない。
だが、それがひどく気に入らなかったらしい妻のナタリアは、ついにモモにヒゲの駆除を頼んだ。あんまりである。
そして、今に至るのだ。

いくら妻の手先とはいえ、自分の娘だ。少し怒れば、引き下がってくれるかもしれない。
ガイは顔をしかめ、眉を跳ね上げ、語気を荒くして言った。

「おい。モモこそ、いい加減にしろ。これ以上しつこいと、パパ怒るぞ」
「いーよぉ、おこったって」

モモはさらりと即答した。

「だって、パパおこったってあんまりこわくないし、おこったママのがずぅぅっっっとこわいもん!」

ガイは、自分の夢見ていた父親の威厳というものがさらさらと崩れて消えていくのを、はっきりと感じた。
モモは腰を低くしてぐっと構える。

「じゃ、おやすみはこれくらいにして、いっくよぉ〜!」


バタバタと慌ただしい音。
ガイは必死にモモを説得しながら、対するモモはただ至極楽しそうに笑いながら走っている。
にしても、9才の女児が何故こんなに元気に家の中を跳び回っているのだろうか。同年代の男児でもこれほどではない。がたいの良すぎる父親にも匹敵するほとだ。
猛ダッシュで家の中を駆け抜ける二人を凝視して、サラはぎゅっと唇を噛み締める。

今、サラはナタリア・イリアと共に開店前の準備をしているところだ。
さほど大きな事はしていないが、皿や調理器具を使いやすいように並べたり、部屋を綺麗にしたりなど、事細かな作業が多い。
確かにそんなことをやる必要はないかもしれないが、やらないと開店後の作業に障害が出る。かといって開店後は忙しく、やる余裕もないので、今やっているのだ。
そういう大切な仕事をバカらしいこと騒いでいる二人に妨害されたら、堪ったものではない。

「もう、二人ともいい加減にしてよ!ここキッチンなんだから!」

見ているうちにいらいらして叫んだサラに対し返って来たのは、一方は切迫した、もう一方は間抜けな返事。

「サ、サラァァッ!ンなことより、モモを止めてくれぇ!」
「んっふふ〜、とめなくていーかんねぇ、ねえちゃん。これはパパがわるいんだからぁ」

げんなりして肩を落としていると、ナタリアがサラの横に立ち口をすぼめて笑った。
彼女の見た目は7年前とほとんど変わっていない。他人が見たら、彼女が何歳かきっとわからないだろう。

「うふふ、頑張ってね、モモ」
「はぁ〜い!」

ガイはここには味方がいないのか、と本気で悲しくなっていると、皿を運んでいたイリアが前を通り掛かった。
救世主と言わんばかりに、間髪入れずイリアの後ろに回り込むと肩を掴み、モモのほうへと半回転させる。
仰天したイリアはうひゃあ、と声を漏らした。皿がかちゃかちゃと鳴る。
その光景に、モモは不満そうに頬を膨らませた。

「ずっるぅい!イリアねえちゃんをたてにするなんて!」

その意見にサラも同意する。

「そうよ!皿を落として怪我でもしたらどうするの!?」

腰に手を当て本気で怒っているサラに、ガイはびくりと身をすくませ、イリアはまだわけがわからずきょとんとした。
ガイはイリアの肩を掴んだまま腰を下げ、首を肩に埋めて、震える声で囁く。

「イリアちゃ〜ん。た、助けてくれよぉ〜…」

イリアはモモとガイを交互に見比べながら、困惑したように眉をひそめた。
こういう場合どうしたらいいか、いつもわからない。昔からのことだ。これだけは全く変わっていない。
あの黒髪の少年なら、もし聞いたら、何か言ってくれただろうか。

突如後ろからガタンと音がして、イリアは現実世界に引き戻された。
肩を掴んでいたガイの手から力が抜け、イリアの背中に頭をこすりつけながら、床に倒れ込む。

「ぐ、ぉ……」

股間を押さえ、体をくの字に曲げていた。痛みでもがいているように見える。
何故、と疑問に思いながら顔を上げると、ガイが立っていたあたりの後ろに、ナタリアが立っていた。
にこりと笑う。
イリアはその笑みで了解した。どうやら彼女がガイの股間を蹴り上げたようだ。
ナタリアは腕を組んだまま、ガイに顎をしゃくった。

「やっておしまい、モモ」
「はぁい!」

モモは嬉しそうに飛び上がると、ジャンプした弾みでガイの体に馬乗りになる。
ガイがモモの重みで小さく呻く。
モモはヒゲを守ろうとするガイの手を引っぺがし、ヒゲを引きずり出す。カミソリを振り上げ、そして―――。
ざっくり。

「うぎゃああぁぁぁぁぁっっ!!!」

愛しきものを刈り取られた、哀れな男の叫びが響き渡った。


<続>

***あとがき***

あと1個、1個と言いながらなかなか終わらなくてすみません…。
7年後の状況とガイ一家の話を絡めながら一つに纏めようとしたら、こんなことに…〓
纏めようとしたのは、前回のが纏まってて良かったよー、と言われ嬉しかったからです。いや、こんなに長くとるつもりはなくて…〓もうちょっと短いかと思ったんですが、しっかりと書こうとしたら、ね…〓
多分、次で終わる。、と何回も言いながら終わらないバカがいるんで信用なさらないよう!

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第32夜 決着 下の下

闇夜のディテール 本編 【完結】CM(0) TB(0)

梅蘭がルフェイルの頭を両腕で抱えて、容態を確かめていると、リーヤがやってくる。どうやら用は終わったようだ。
リーヤは膝をついて、ルフェイルの顔を覗き込む。
ルフェイルの虚ろな目が、リーヤを捕らえた。

『小僧が生き残れる方法が一つだけある。どうする、生き延びたいか?』

普通の人間ならば、ここで肯定でもするのだろうか。
しかし、ルフェイルは違った。ゆっくりと首を振る。

「俺さ……はもう、十分、生きた
や、りたい、ことも、全部やっ、た…
だから、もう、い、い…」
『なら貴様はあの少女との約束を破る気か?』

閉じかけていたルフェイルの目が、うっすらと開いた。先程のような虚ろなものではなく、僅かなりとも定まっている。

「破る気は…」
『なかった、とでも言うつもりか?だが貴様がここで死んでしまえば、結果的に約束を破ったことになるだろうが』

ルフェイルは反論出来ず、視線を空中にさまよわせた。
だがその動きもひどく緩慢としていて、息も先程より増して絶え絶えになってきた。
やるなら、早くやらなければ。

『貴様、以前王都で言っていたな?”意味のない、理不尽な死がなくなるといい”、と』

ルフェイルはほんの小さく頷く。

『なら、俺様がその世界を作ってやる。だからお前も手伝え。そして見届けろ。望んだ貴様がいなければ、作る意味もない』

ルフェイルは眉間に手の甲を起き、体を震わせた。笑っているのだ。
リーヤはむっと頬を膨らませる。

『何が言いたい?』
「僕に、…尋、ね………た割に、は、結局、選択、肢を……く、れない…ん、じゃ、ないか、と…思、ってな……」

顔から手を外す。ふぅ、と溜息を吐いた。

「い、い……だろ、う……貴様の、やり……たい、最後、の方、法……はだ、いた、い、想…像…が、つ…く、か、らね……」

リーヤは決意したように深く頷く。ルフェイルの体に手を翳しながら、梅蘭のほうを向いた。

『このことは他言無用だ。絶対に言うな』
『へ?あ、はい』
「別に、お…僕は、言っ……て、も、構わ、な…い、の、……だが……」

ルフェイルの反論に、リーヤはきっと睨む。

『言わないほうがいろいろと楽だろうが。幸い、小僧を見た魔物も少ないしな』

キィィ、という金属音と共に、ルフェイルの体が白く発光し始めた。
リーヤは何処か悲しそうに目を細め、呟く。

『世界を滅ぼそうとか、考えるなよ…』
「考え、な……い、よ。……だって、世界を、滅ぼ、そうと……か、もし、す、るん、だっ、たら…」

ルフェイルは手を高く掲げ、部屋の電球に翳す。ぼやけた光が、指の隙間から射してきて、顔に降り懸かった。

あの時、自分は空っぽで何もなくて、それをひたすら隠すようにして生きていた。
けれどもいつの間にか、自分は三人の人間に支えられていた。
頑なになっていた自分を、暖かく、優しく溶かしていった。

とても、幸せだった。

でもそれはほんの短い期間で、たった一日で壊れてしまった。
自分を育てた、自分が僅かなりとも慈しんだものを全て真っ赤に染めて。

「あの、時…していた、はず、だ、から……」

でもしなかった。
友の言葉が、あったから。
だから、これからもしない。
もししたら、それは友の言葉を、気持ちを、裏切ることになる。

ルフェイルの体は白い光に包まれ、それは部屋をも呑み込む。
そして―――。


<続>

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プロフィール

Author:透雫
ロックオン、欅くん、泉孝介、サルドニュクスは我が心の夫。
マンガ、小説、ゲーム(一部)はバッチコイ。歴史は戦国〜安土桃山、最近はWW?、?に熱中。

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