※これは機動戦士ガンダム00に出てくるロックオン・ストラトスの過去捏造話です。苦手な方はお戻り下さい。
アイルランド。
そこは数世紀に渡って紛争が続いている国である。
そこに、無差別テロで家族を失った一人の男性がいた。
バン、バンという銃撃の音とともに、一つ、また一つと標的の物が撃ち落とされていく。20の標的に使ったのは20個の弾。外したり、かすった弾は一つもなかった。
「すごいじゃないかニール!全部当てたのはお前だけだ!お前は天才だ!」
店の初老の男性は手を叩いて喜ぶ。銃と標的の距離はゆうに200メートルはある。それを正確に当てるなど、明らかに凡人の域ではない。
だがニール・ディランディは肩をすくめて苦笑する。
「そんなことないさ、おやっさん。たいしたことないって」
銃を調え、男性に礼を言うとニールは歩み出す。
肩につくくらいまで伸びた茶髪をかきあげ、緑色の瞳を伏せる。
そうだ、たいしたことなんてない。いくら狙撃の腕が良かったとしても、何に使えるというのだろう。
自分の両親と妹は無差別テロに巻き込まれて死んだ。以来、この心には復讐心が満ち満ちている。
政府も無差別テロに対し一応の処置は施したもののあまり効果はなく、一向になくならない。その上政府の関心はあちこちで続いている紛争に向いている。
政府は頼れず、他の何に頼ったらいいかもわからない。手の打ちようがないのだ。
自分だって、どうしたらいいか考えた。簡単明瞭、無差別テロをなくすには戦争をなくし、全世界の無差別テロリストを殺せばいいのだ。
だがこんな2本の手で何が出来るというのだろう。銃という殺人兵器は扱えるが、それでも到底届かない。どうしようもないのだ。
その時だった。
地響きがするほど激しい爆発音が後方からした。振り返れば、大きな煙が上がっている。場所は大体先程自分が狙撃を行ったところだ。
ニールはぐっと拳を握り締め、来た道を走って戻る。
「おやっさん…無事でいてくれ…!」
店のあった場所は悲惨としか言いようがない光景に様変わりしていた。
店はもちろん、周りにある木々も焼け爛れ崩れ落ちていた。
あまりに突然で恐ろしいことに騒いだり悲鳴を上げる人々を押し退け、店の男性をくまなく捜す。
ふと、店の瓦礫の下に押し潰された人が目に止まった。頭の部分しか見えなかったが、それは明らかに先程の男性だった。周辺には致死量は軽く超す血の海。体も全く動いていない。
同じような光景が昔あった。
自分の家族はテロに巻き込まれ、瓦礫の下に埋まった。
自分は助かった。周りの人に奇跡だと喜ばれたが嬉しくなかった。
後ろを振り返れば、数枚のシートとひしゃげた車。シートは人の形に盛り上がっている。
大切なものが一瞬でなくなった。あの時は何も出来なかった。今度も、また何も出来ないで終わるというのか。
あまりの自分のふがいなさに絶望していると、何かが目の前を横切った際ニールの体にぶつかった。しかし相手は謝ることもなく走っていく。
何だろう、と思ったがその疑問はすぐに解消された。
損傷した木の下敷きになった男性が苦し紛れに叫ぶ。
「逃げた!あいつが、あいつがやった!」
そうしている間にも、男は仲間の車に乗り、逃走しようとしている。
「させるかっ!」
ニールは他人の車に乗せられていた銃を引ったくると、車の後方のタイヤの一つを狙い撃った。
一瞬にしてタイヤの空気は抜け、ギャギャギャと激しい音を立てながら車は右に曲がっていく。
さらに、残りの片方のタイヤにもう一発。それで完全に車は沈黙した。
間を置いて右側のドアが蹴り開けられ、男が出て来た。先程逃走していた男だ。
ニールは駆けると、銃の手の持つ部分で男の後頭部を殴打した。男の体が揺れ、倒れたと同時に左側の運転席がら出て来た男はニールを殺そうと銃を構える。
ニールはそれよりも早く男の手に照準を合わせるとすかさず撃った。
「うああぁぁっ!!」
男の手からは鮮血が噴き、銃が落ちる。
後方から、ファン、ファン、ファン、と警察がサイレンを鳴らす音が響いて来た。
ニールはやれやれと安堵して銃を置く。空を見上げれば、厚くかかった雲の隙間から、亡くなった者達を連れていくように光の梯子が降りてきていた。
警察に犯人かと疑われたが、事情を話し周りの人が弁護してくれたおかげもあって、やっと解放された。
そしてこの場を離れようと歩き出す。ここにはまだたくさん野次馬がいて、かなり騒がしかった。ニールに話し掛けて来たその女性も、最初は野次馬の一人だと思っていた。
「ねぇ、そこのあなた」
ニールは歩を止め振り返る。
天然パーマのかかった赤黒い長髪を持ち、黒いサングラスをかけた女性だった。
「あなたの射撃能力すごいわ。とても精密なのね」
そういえば、店で狙撃していた時もこの女性がいた気がする。ニールは警戒心を強めて、相手を睨んだ。
「どうも。で、そういうあんたは何用だ?」
「あなたを誘いに来たの」
ニールはびくりと肩を強張らせる。
先程までは何処か軽いイメージのあった女性が一瞬で厳しいものに変わったからだ。
「私設武装組織【ソレスタルビーイング】に」
「ソレ、スタル…?」
聞いたことのない名前だ。ニールは黙ったまま女性の続きを促す。
「戦争を世界からなくすために作られた組織よ」
ニールは眉をひそめる。
「今、あんた”武装組織”って言わなかったか?戦争を武力でなくそうっていうのか?」
矛盾があり過ぎるではないか。
しかし女性は迷いもなく頷いた。
「そうよ。確かに変かもしれないけど、それが一番有効な方法なの」
それもそうだ。何時クーデターを起こしても国は動かず、国連も何もしてくれない。自分達がやるしかないのだ。
「しかしどうやって…」
「あなた達にはモビルスーツに乗って戦ってもらいます。シュミレーションはたくさんするから、乗り方がわからなくても大丈夫よ」
ニールは顎に手を当て思案する。
「俺”達”、って言ったな?」
「えぇ。まだ入ってもらってないけど4人乗ってもらうわ。ただ…」
女性は顔を曇らせる。
「全世界が敵になるだろうから、死の覚悟はしてもらわなきゃいけないんだけど…」
ニールは真っ直ぐ女性の目を見る。
「もしそれが成功したなら、戦争やテロはなくなるんだな?」
女性も真っ直ぐ見返す。
「もちろんよ。そのためにあるんだもの」
「なら俺はやるぜ。4人で世界が変わるなんて、上等じゃねぇか」
ニールが不敵に笑うと、女性は哀しそうに笑った。
テロ撲滅は自分の悲願ではないか。もしそれが自分の、自分達の手で叶うというなら―――なんだってやってやる。
「…ありがとう。あと、もしもの時のためにあなたにはこれから偽名を名乗ってもらうわ」
ロックオン・ストラトス。
これがニールに与えられた偽名だった。
「了解。あぁ、聞き忘れてたな、あんたの名前は?」
女性は苦笑する。
「これも偽名なんだけど、スメラギ・李・ノリエガよ。戦術予報士をやっているわ」
戦術予報士とは、作戦行動時における敵側の戦略・戦術・対応手段を予測し、それに対抗する味方側の最適行動のパターン抽出と選定、そしてそこから引き起こされる戦況の推移や変化等を予報する民間の技術士のことだ。要するに軍隊の作戦参謀のようなものである。
ニール、改めロックオンはふと有名な戦術予報士の女性を思い出した。あの戦いで大敗後表に出てこないらしいが―――。
いやいや、それはないだろうと首を振って有り得ない考えを消した。以後、この小さな疑惑は大きな確信へと変わることになる。
スメラギはロックオンの挙措動作の意味がわからなかったが問わず、手を差し延べた。
「これからよろしくね、ロックオン」
ロックオンも手を延ばし、握手する。
「あぁ、ミス・スメラギ。期待しているぜ」
そして、ロックオンは操縦桿を握り続ける。
テロと言う悪夢の螺旋を断ち切るために―――。
<続>
***あとがき***
お、終わった…嬉しー!
一度でいいから書いてみたかったんだもん、過去捏造話!
参考文献に関して、小説を参考、引用させてもらいました。参考はロックオンの過去、引用は戦術予報士についてです。説明が全く思い付かないので泣く泣く…。私の文章能力の無さがあらわです。
あと、もし学園パラレルも書くかもしれませんが、放っておいて下さい!00かなり好きなんですよ!
ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!ではー